――ある日、酔っぱらったオカンが若い男を拾ってきた。

「今夜はね、おみやげあんねん。」

「分かった分かった、明日いただきます。」

「あかん、ナマモノやから、あかん」

……どちらさん?

「オカンな、この人と、結婚しよう思うてんねん」



テカテカの、いかにも安ものの真っ赤なシャツに今どきリーゼント頭の捨て男(研二)を連れてきたオカン。強烈なその男の登場は、オカンと娘・月子、そしてオカンの過去を知る隣人・サク婆、愛犬・ハチへと波紋を広げ、3人と1匹の穏やかな日常を静かに変えていく。

「捨て男って呼ばんといてな」

「“捨て男さん”は板前さんなんですか」

「どないしても月ちゃんは捨て男って呼びたいねんな」

「どないしても月ちゃんって呼ばれたないんです」

板前だった祖父・服部の血を引く研二の作る温かい料理。それはオカンと娘・月子をとりまく人々の心を徐々に溶かしていく。
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